博多織といったら、浴衣などに合わせる半巾帯の献上柄など、誰もが一度は目にしたことがある独特な柄が代表的な織物ですね。

 
 
 
博多織の特徴である腰のある織りに仕上げるために、手機りで作っていた頃は、力が強い男性しか織れなかったという織物です。

丁度良い硬さと腰のある博多織の帯は、一度締めたらゆるむことがないため伊達締めなどにも使われるほど、初心者にももってこいの帯です。
 
また、博多織の代表的な献上柄は、実は隠された意味や願いが込められているんです。
 
 
目に見える表より、奥に隠れた裏の意味を美とする日本人独特な感性がいっぱい詰まった博多織。
 
今回はそんな博多織をひも解きながら、知れば知るほど面白い献上柄の特徴や歴史を紹介します。

博多織とはどんな着物?種類や特徴は?

博多織とは、福岡県の博多を中心に生産される織物の総称です。

博多織といえば帯が有名ですが、日本で作られるようになった頃は着物を作る着尺として織られていた織物でした。
 
 
鎌倉時代の1241年が始まりと言われ、2018年に777年を迎えた博多織はほとんどが帯として織られています。
 
中でも現在までに残る代表的な種類は下記の6種類ほどあります。

①平地(ひらじ)

たくさんの経糸に太い緯糸を細かく打ち込む、博多を代表する織物です。

献上帯といわれる帯はこの平地で柄を織り込んでいますね。

②間道(かんどう)

献上模様以外の縞の柄でできた織物。

縞の中は繻子織で模様を織り出し、見るからに華やかで品のある織物です。

③佐賀錦(さがにしき)
経糸に金銀の箔や漆を置いた和紙を使い織られています。

着物好きならいつかは欲しい最高峰の帯ですね。

④風通(ふうつう)

経と緯ともに二重で織る方法で作られている織物。

柔らかいのにしっかりとした生地の風合いが特徴です。

⑤紗(しゃ)
紗は2本の経糸を1本の緯糸にからませることで格子状に透かし目を作りながら織っていく夏用に使われる織物。

紗献上帯は夏の着物姿にピッタリな帯ですね。

⑥本袋(ほんぶくろ)
表面と裏面を一枚の袋状に織る織物。

表と裏を一度に織るため多くの経糸を使用して技術的にも難しい織物です。

博多織で作られたこれらの帯の最大の特徴は、

「一度締めたら緩んでこない」

ということです。
 
 
その特徴を生かし、昔は重くて固い刀を腰にさす武士の帯としても使われていたため、現代でも男性の帯としても使用されていますね。

 
帯をしめるたびに、絹が鳴くと言われている

「キュッキュッ」

という音と、程よい強さで安定感のあるしめ心地は、他の帯ではまねできない着付けのしやすさを実感できます。
 
 
このような絹鳴りの音と程よい締め心地の秘密は、「経糸の多さと緯糸の太さ」と、「緯糸を打ち込む強さ」にあります。
 

経糸(たていと)とは、織物を織る糸のうち、縦方向に通っている糸のことです。
緯糸(よこいと)とは、織物を織る糸のうち、緯方向に通っている糸のことです。
織物は、糸を経糸と緯糸にして織り上げます。糸の種類や組織の仕組みなどの違いから多種多様な織物がある。

 
 
 
通常の帯は経糸を4000本~5000本使うのに対して、博多織の経糸は、6000本~多いものでは15000本も使用したうえに、7~15本も撚り合わせた太い緯糸を使います。

さらにそれらの糸を筬(おさ)で強く打ち込んで織っていきます。(柄は主に経糸を浮かせて作られます)

そのため、動くと弾力性のある緯糸が反発して空気の層ができるため、一度なったら何度も聞きたくなる博多帯独特の絹鳴りがします。
 
 
そして、力強く縛った帯でも、ほどいて平らな面で織りに沿ってそっとなでると、どんなに頑固なシワでも消せることができる魔法の織りです。

一度ついてしまった帯の締め後は、意外に気になるものなので、博多帯のしなやかな特徴は着付けの際にはとてもありがたいですね。
 
 
現在では、手織りの技術を持った後継者が少ないため、ほとんどの製品が機械織でつくられ、博多織製品には博多織工業組合が発行する証紙が貼られています。
 
購入時、

「どのように織られている商品なの?」

「どんな糸を使っているの?」

などの織の種類の判別をするために、一つの目安として役に立ちますね。
 
 

そんな博多織の中でも、代表的なものが下の画像のような献上柄です。

縦に繋がる縞模様が印象的な献上柄ですが、その一つ一つの柄には深い意味が込められています。
 
日本人は古くから身近な物や大切な物に、願いや思いをこめた柄を文様として描く風習があり、その柄の意味をひも解くことも楽しみの一つとしていました。
 
 
次は、そんな献上柄の深い意味や、使用可能なシーンや着物との合わせ方などを紹介したいと思います。

 

博多織の献上柄の特徴や裏に秘めた意味は?

献上柄の博多帯は、女性が使う帯だけでなく男性が締める角帯や浴衣に使われる半幅帯、着物を着付ける際に使用する伊達締めなど、様々なシーンで使われています。
 
 
そんな博多献上帯は下のような特徴があり初心者から上級者まで使いこなせるとても便利な帯です。

  • 古くから愛される時代、年代を問わない柄
  • 季節を選ばない一年中使える帯
  • 普段着から略礼装まで広いシーンに使用可能

これだけの特徴を見ても博多献上帯が着物好きの間で長く愛されている理由が分かりますね。

江戸時代に幕府への献上品とされた事から始まった「献上柄」「献上博多帯」の上記の3つ特徴をさらに詳しく紹介します。

古くから愛される時代、年代を問わない柄の秘密

献上柄と呼ばれる独特な柄は、誰もが一度は目にしたことがある、老若男女問わずいつの時代も愛され続けた柄です。
 
 
そんなロングセラーの柄の理由は、下の画像のような縞の配列と柄の成り立ちにあります。

献上博多帯の柄

献上柄は「親子縞」「独鈷」「孝行縞」「華皿」の4つの柄の縞でできていて、柄一つ一つに意味を持ちます。

■縞のモチーフ 家内安全、子孫繁栄の願い

親子縞(中子持縞)
親子縞
「親」を表す太い線の間に「子」を表す細い線があり、親が子を包み込み守っている様子を表します。

家内安全の願いが込められています。

孝行縞(両子持縞)
孝行縞
親子縞と逆の配置で、親から子へ広がっていく様子を表し「子が親を慕う」という意味もあります。

子孫繁栄の願いが込められています。

■仏具のモチーフ 魔除け、厄除けの願い

独鈷
独鈷
独鈷は密教で使う仏具の一種で、堅固であらゆるものを摧破(さいは)するところから,煩悩を破る悟りの智慧の象徴として採り入れられたものです。

華皿
華皿
仏具の一種で、仏の供養のために花を入れるお皿です。

そして、これらの柄の連続からできているのは

「いつの時代も変わらぬ永遠の親子の愛情」

という意味も込められているので、献上帯はどんな種類の帯でも全通で作られているんです。

全通とは生地全体に柄が付いている帯のことを言います。

 
 
 
これだけ奥深い意味が込められた柄だから、江戸時代の殿様や武士に認められ、現代まで時代、年代関係なく人々に愛されてきたのですね。
 
そして、献上柄の帯はそれ意外にも着物好きから好まれる理由があるので紹介します。

季節を選ばない一年中使える帯

博多織の中でも、厚地の「紋織り帯」は袷や単衣に合わせ、薄地の「紗献上」は夏物に合わせますが、平地の「献上博多帯」は一年中使うことができるオールシーズン用帯です。
 

程よい硬さと、ハリのある生地の献上博多帯は通気性にも優れているので、季節を問わずに締めることができます。
 
そのため、季節に合わせた帯選びが苦手な初心者でも、安心して締める事ができるのがうれしいですね。
 
 
そして、シーズンだけの問題ではなく帯の格としても使い勝手の良い帯なのでどんなシーンで使えるのかを見ていきましょう。

※格とは、そのものの値打ちによってできた段階・位・身分・等級などを表すものです。帯の場合は、帯の「種類」「文様」「紋の数」「着物との組み合わせ」など様々な違いで格が変わってきます。

 

普段着から略礼装まで幅広いシーンに使用可能

かつては江戸幕府や武士などにも好まれた献上柄は、現代までの長い歴史の中で様々なシーンで使われてきました。
 
 
女性の着こなしで一番に思い浮かべるのは、浴衣や木綿の普段着に貝の口などのカジュアルな装いではないでしょうか。
 
また、男性の角帯などは、花婿さんの紋付袴を着るときにも使われるほど盛装やフォーマルな装いもあります。
 
 
現在では様々なデザインの帯が作られ、吉祥模様と献上柄を組み合わせた袋帯などもあります。

このような袋帯を紬の訪問着に角出しなどでコーディネートすると、江戸っ子が好む「粋」でおしゃれな着物通のできあがりです。
 
 
奥深い意味を持つわりにシンプルな柄なので、控えめな柄行きの付け下や、一色染めの色無地や江戸小紋といった略礼装まで幅広い用途で活躍してくれるのが魅力です。
 
 
このように季節や着物の種類に幅広く対応してくれる万能な献上柄が

「始めの一本は博多献上帯」

といわれてきたのも納得ですね。
 
 
現代まで続く不動の人気を誇る博多織は、長い歴史の中で他にも様々な物語があります。
 
始めの一本でも、これからの一本でも歴史を知ったら博多織が益々好きになる、さらなる魅力を紹介します。

色にも秘密がある博多織の歴史はいつから?

博多織の歴史がいつからということについて調べてみると、博多織工業組合のホームページに記載がありました。

博多織は鎌倉時代の1235年からだそうです。

博多で商人をしていた満田弥三右衛門と承天禅寺の聖一国師が中国の宋へ渡り、そこで学んだ織の技法を博多で伝え始めました。

※聖一国師:僧侶として最高の栄誉である「国師」の号を日本で最初に贈られた高僧のこと

 

 

江戸時代に入り筑前黒田藩の初代藩主の黒田長政が、博多織を徳川幕府への献上したことで、献上帯と呼ばれるようになりました。

 
幕府へ献上する際には、古代中国の思想である五行説により「木・火・土・金・水」を表す5色の帯が織られました。
 
現在は、下記の5色を五色献上と呼んでいます。

 
 
明治18年には、ヨーロッパからジャガード織が導入され、紋紙を使って図柄を自動的に織り上げられるようになり、柄の種類が大きく広がり生産性も高まりました。
 
 
そして、昭和51年6月に博多織の帯地が経済産業大臣の指定を受け伝統工芸品に指定されとことで、日本を代表する染織の一種として新な時代の始まりです。

近年は帯や着物以外にも、ギフト製品やネクタイなどの小物、舞台ホールの緞帳(どんちょう)、洋服などさまざまな博多織商品が作られています。
 
 
以上が、博多織の歴史ですが長くなるので今回はかなり簡単に紹介しました。
 
博多織に限らず着物や帯は歴史を学ぶことで、見ただけではわからないその物の隠れた意味や、込められた思いなどが知ることができます。

また、それらを知ることで自身のコーデネイトにも深みが出て、上級者の装いもできるようになります。
 
 
そこで今回の記事よりも、もう少し深堀した歴史をまとめた記事があるので紹介します。

こちらの記事は、博多織の歴史をわかりやすいように年表にして紹介しています。
 
献上柄の成り立ちだけでなく色に込められた意味なども紹介していて、今まで知らなかった博多織の魅力がわかるのでおすすめです。
 
 
博多帯は現代も様々なシーンで見られ、不動の人気を誇る帯として着物好きの間で人気です。
 
 
また、毎年11月には一般の人も入れる「博多織求評会」が福岡で開催されています。
 
 
博多織工業組合主催の「博多織求評会」では内閣総理大臣賞をはじめとする数々の受賞作品や新作が一堂に集まるので、普段目にすることができない作品が見れる絶好のチャンスです。
 
より多くの本物に触れ、その物を作った職人さんの心に触れることで、自分のコーディネートの幅も広がると良いですね。