単衣の着物とは?使用時期や仕立て方は?袷との見分け方も

冬から夏に変わる6月(春)と、夏から冬に変わる9月(秋)に着るものと言われているのが、単衣の着物です。
 
 
けれど近年の温暖化の影響で、年々暑くなる気温の中で、その決まりやルールにしたがった着こなしのままだと、

「暑くて着物なんて着てられないわ」

と言いたくなってしまいますよね。
 
 
そうしたことから近年は、決まりやルールを考えたうえで、その日の気温や体感から自分の判断で単衣にするか、他の種類の着物にするかを選ぶ傾向にあります。
 
 
そうは言っても初心者の頃は、ルールに反した着こなしをして出かけるのは不安で、どのように着こなせばよいのかも分かりませんよね。
 
 
そこで、今回は着物を快適に楽しく着こなすためにも、まずは単衣の着物とはいつ着るのかや、それにともなった仕立て方などを紹介したいと思います。
 
更に分かりやすく単衣の着物を理解するために、冬に着る袷との見分け方も紹介します。
 
 

単衣の着物の使用時期は?

着物は季節によって、下のように着る種類が変わってきます。
 

  • 10月~5月・・・・袷の着物
  • 6月・9月・・・・単衣の着物
  • 7月・8月・・・・盛夏の着物

 
単衣の季節
 
上の表から見てもわかる様に、ルール上では単衣の着物は、季節の変わり目の6・9月に着るものとされています。
 
 
しかし、4月5月でも20℃近い日もあって、袷なんて着ていたら溶けてしまいそうな日や、逆に残暑も長く体感温度も人それぞれで9月10月でも単衣でも暑い日があります。

それに、気温が大きく異なる沖縄から北海道まで全国同一に

「6月になるまで単位を着てはいけません」

「9月に入ったから単衣を着なければいけません」

というルールは現実ではありえないですよね。
 
 
そのため、時期を問わずその時々の環境や体感温度に合わせて、単衣を着るのかどうかを判断する人が増えてきました。
 
 
空調設備の発達で、季節を問わず年中快適でいられる環境も整っている場面も多いため、着物と言えば、日本の服飾評論家の市田ひろみさん(下の画像)が

「私は冬でも単衣を着ます!」

と公言してくれたことも、着る時期を自由に決める様になった、大きな要因の一つになりました。
 
 
日本の服飾評論家の市田ひろみ
 
 
とは言っても、初心者の頃はルールをやぶるのは

「他人に『間違ってる』と思われたら怖くてできない」

と思っている場合も多いと思います。
 
 
しかし、本来は身体を守るための衣類である着物のせいで、体調を崩していては元も子もありません。
 
 
お茶席や結婚式参列など、格やドレスコードが必要な場合を除いて、普段のお出かけはその日の気温や行動パターン(室内が多いのか、外で歩くのが多いのか)で自分の体感にあった判断をするのが良いと思います。
 

※格とは、そのものの値打ちによってできた段階・位・身分・等級などを表すものです。

着物の場合は、着物の「種類」「文様」「紋の数」「帯との組み合わせ」など様々な違いで格が変わってきます。

 
 
そもそもなぜ、単衣の着物が6月9月に適していると言われる様になったかというと、仕立て方の特徴にあります。

「今日は何を着ていけば良いのだろう?」

と悩んだ時の判断基準の一つとして、仕立て方を知っておくことで、スムーズに判断できるようになるので、次は単衣の着物の仕立て方について見ていきましょう。
 
 

単衣の着物の仕立て方は?

単衣の着物というのは、表の生地だけ=「単(一枚)」で、仕立てた着物のことを言います。
 
 
10月から5月に使用するとされている袷の着物は、裏と表が合わさった二枚の生地=袷(あわせ)で、仕立てた着物です。
 
 
単衣の生地は袷と同じ生地を一枚で仕立てる場合と、単衣専用の少し薄めの生地で仕立てるので、暑すぎず寒すぎない6月9月に使用すると丁度良いとされているのですね。
 
仕立ての方法に、腰から下の後ろの部分に「居敷当て」と言われる裏地を付けて下の画像のように仕立てる場合があります。
 
 
居敷当て
 
 
居敷当ては、付ける幅や大きさが色々あり、お尻の部分の生地の強化と透け防止の目的で付けられます。
 
 
単衣の居敷当て
 
 
単衣の着物は生地によって、肌着や長襦袢などが透けるので、防止したい時に、居敷当てを付けます。
 
逆にあえて長襦袢を透けさせたコーディネートをする時は、居敷当てを付けてない仕立ての着物の方が良いですね。
 
 
衿を広衿に仕立てる場合は下の画像のように裏地を付けて補強をします。
 
単衣着物の仕立て
 
 
他にも単衣の仕立て方は、袷との仕立て方の違いで外から見た時の見た目も変わってきます。
 
人の着こなしを見分けコーディネートの参考にする場合にも、単衣と袷の違いを知ることも大切ですので、次は単衣と袷の見分け方を紹介します。
 
 

単衣と袷の見分け方

単衣の着物は裏地無し、袷の着物は裏地ありで仕立てるために、ちょっと動いた時などに裏地の有り無しが確認できて、単衣か袷かが見て分かります。
 
着物の裏地の有り無しが確認できる場所は、下の画像の裾・袖口・振りなどです。
 
 
着物の裾
着物の裾
 
 
着物の袖口
着物の袖口
 
 
着物の振り
着物の振り

以上の場所などから、裏地の八掛が見えたら袷の着物ということです。
 
 

八掛とは、着物の裏地の事で、八掛けの色や柄を表地とは別にしておしゃれを楽しんだり、共八掛という表地と同じ生地の八掛を付けて高級感を持たせたりします。

 
 
袷の着物は、歩いた時に少しめくれる裾の八掛や、袖口や振りなどから見える八掛の柄が表地とのバランスが良い時は、着物通の上級者という感じがして素敵です。
 
 
逆に単衣の着物は裏地が付かないので、表地の裏がそのまま見えます。

単衣の生地でも裏もおしゃれにしたい時は、下の画像のような風通という二重組織で織られた生地で仕立てると、裏表で遊べます。

 
風通とは御召に多く見られる、一枚なのに裏と表の柄が違う織り方の事で、両面使えるリバーシブルで織られている物のことです。
 
風通の生地だと、裏地をおしゃれにするだけでなく、下のように右と左の身頃を裏表で仕立てる事で、一枚の生地で全く違った表情の着物を作ることができます。
風通御召
 
 
以上のように着物の知識を付ける事で、単衣の時期や袷の時期の着物の着こなしが解決するだけではなく、おしゃれの面からも、自分だけの着こなしができるようになります。
 
 
着物というと、決まりやルールにとらわれすぎて、難しく感じてしまうかもしれませんが、実は洋服のコーディネートとなんら変わりのない着こなし方でよいことが分かりますね。
 
 
単衣の着物だからと、かたくなに6月7月限定にするのではなく、せっかくの着物ですから上手に使用時期や仕立て方を工夫して、多くの出番を作ってあげてくださいね。