着物に詳しくなくても加賀友禅と言う言葉は聞いた事あるというぐらい、着物と言えば加賀友禅が思い浮かびます。

加賀友禅は「京友禅」「江戸友禅」と並び、日本の三大友禅の一つでもあリますが、どんな着物か意外と知らない事も多いですね。

 

友禅とは「友禅染め」の略で「糊で防染して柄を付ける技法」の事で、その技法を完成させたと言われている宮崎友禅斎の名前から付けられています。

 
 
そこで今回は加賀友禅の柄の特徴や歴史、京友禅との違いなどを紹介したいと思います。
 
 

加賀友禅とはどんな着物?特徴は?


 
加賀百万石の城下町だった加賀国(現在の石川県金沢市)で、室町時代から行われていた友禅染のことを加賀友禅と言います。
 
 
経済産業大臣指定の伝統的工芸品でもある加賀友禅は、現在も金沢市を中心に作られていて、市の伝統産業として、観光資源として着物だけではなく様々な物に使われています。
 
 
そんな加賀友禅の最大の特徴は、無地の梅染めが始まりだと言われている染めの技法をもとに、柄付けで行う下記の5つの技法です。

  • 写実的で自然や古典をモチーフにしている。
  • 「臙脂(えんじ)・黄土・藍・草・古代紫」を基調とした加賀五彩と言われる色を使う。
  • 「虫食い葉(わくらば)」の技法が使われている。
  • 「先ぼかし」の技法が使われている。
  • 金加工や刺繍や絞りは使わない。

上記の技法を使って、柄を描くのは加賀友禅しかないので、他の友禅と区別する際にも上記の技法を見比べれば、加賀友禅だということがすぐに分かります。
 
 
そして、加賀友禅にはもう一つの大きな特徴があり、柄の図案の作成に始まり、下絵から彩色までを一人で行う「一貫制」で着物が作られていることです。

京友禅などは「分業制」と言って、一工程ずつ専門の職人さんが順番に作業をしていくのですが、加賀友禅の場合は図案の構想から全て一人で作業をするので、作られる着物は作家さんの個性が大きく反映されます。
 
 
それでは、上記の柄付けの特徴をもう少し詳しく紹介します。

加賀友禅の柄の特徴と虫食い葉とは?

独特な技法による柄付けの「虫食い葉」「加賀五彩」などは加賀友禅として切っても切れない大切な特徴です。

他にも加賀友禅の柄にはいくつもの特徴がありますので、その代表的な特徴を5つに分けて紹介します。

  • 加賀友禅の柄(文様)
  • 加賀友禅の彩色「加賀五彩」とは
  • 加賀友禅の「虫食い葉 」とは
  • 加賀友禅の先ぼかしとは
  • 加賀友禅の柄の加工

加賀友禅の柄(文様)

加賀友禅に描かれる柄は、金沢と言う土地の風土などが彩色や柄などに大きく影響しています。

その土地で育まれた自然の草花を実写的に表現したものや古典的な柄が多いため、加賀友禅独特の落ち着きのある柄が多いです。


 
 

加賀友禅の彩色「加賀五彩」とは

加賀友禅に使われる色には「臙脂(えんじ)・黄土・藍・草・紫」を基調としている「加賀五彩」という色をもとに作られます。
「加賀五彩」
この「加賀五彩」を微妙な割合で混ぜ合わせ、作家さん毎にオリジナルな色を作って彩色するため、他には無い一点物の着物を作ることができるのが特徴です。

又、それら古典の色調を大切に伝承しながら彩色するところも、加賀友禅が古くから愛される要因の一つなのでしょうね。
 
 

加賀友禅の「虫食い葉 」とは

虫食い葉とは、その名の通り「虫に食われた葉」の様子を表現したもので、加賀友禅の大きな特徴です。
加賀友禅の「虫食い葉 」
虫食い葉は、他の友禅には無い技法なので、虫食い葉が描かれているだけで加賀友禅だということがすぐに分かりますね。

加賀友禅の先ぼかしとは

加賀友禅の柄のぼかし方の事です。

京友禅とは逆に柄(下の画像なら花びら)の端を濃く描き、中心に行くほど薄くぼかして行く技法です。
加賀友禅の先ぼかしとは

加賀友禅の柄の加工

加賀友禅の柄の加工は基本的に描き染めのみになります。

他の友禅(下の画像)のように艶やかできらびやかな金加工(箔置き)や刺繍や絞りは基本的に行いません。
京友禅金加工(箔置き)や刺繍や絞り

それにより、加賀友禅独特の落ち着きのある柄が表現されています。
 
 
このように、加賀友禅にはいくつもの特徴を大切に伝承しながら、現在も友禅と言ったら加賀と言われるほどに、着物好きから愛される存在であり続けています。
 
古くから日本の人々を魅了してきて、三大友禅の一つと言われるようになるまでには、どのような歴史があるのか見ていきましょう。

加賀友禅の歴史

加賀友禅の歴史は、今からおよそ500年前の戦国時代の、加賀独特の染め方である「梅染」の無地染が始まりだと言われています。
 
「梅染」は加賀国の人々からはお国染と呼ばれ、外の人々からは加賀染と呼ばれ、全国的に名の知れたこの染色技法は女性たちの憧れでした。
 
 
ここでは約500年の歴史を持つ加賀友禅の歴史を大きく4つの時代に分けて紹介します。

  • 江戸時代初期の加賀友禅
  • 江戸時代後期の加賀友禅
  • 明治時代以降の加賀友禅
  • 近年の加賀友禅

江戸時代初期の加賀友禅

桃山末期から江戸時代にかけて、加賀にはすでに約200軒の紺屋(染め屋)があったと言われています。

当時は藍染を主とした青系の染め屋の紺屋と、紅や茜を主とした赤系の染め屋の茜屋の二種類の染め屋もあり、加賀のお国染めとして様々な無地染の染色がされていました。
 
加賀友禅の染色技法は、友禅の名前のもとにもなった、扇絵師の宮崎友禅斎が江戸元禄の頃に完成させたと言われています。
 
 
もともと宮崎友禅斎は石川県の能登穴水の生まれで、加賀染めを習った後、京都の知恩院前に住居を構え扇絵師となり、晩年に金沢に戻り、紺屋の頭取「黒梅屋」のもとで染め衣装の下絵を描いていたと伝えられています。
 
 
友禅染の紺屋は、京都・江戸・金沢に集中していましたが、友禅染の創始者である宮崎友禅斎が京都で染め技術を考案し、金沢で完成させたことから、加賀友禅が特化されたのですね。
 
 

江戸時代後期の加賀友禅

江戸時代後期の染色の技法には、下記のようなものがありました。
 

  • 浸染(しんぜん)
  • 引き染
  • 糸目糊による挿し友禅
  • 型紙による摺込友禅
  • 防染糊による小紋
  • 中型の型染

現代に通じる多くの技法が確立されていて、それぞれ専門の職人によって染色されていました。
 
当時、全国の染色の模様はパターン化されていましたが、金沢では紺屋ごとに専門の絵師がいて、その絵模様にもとづいて友禅が描かれました。
 
京都や江戸などは 装飾画の需要が多かったのですが、加賀では装飾画の需要は少ない代わりに工芸が盛んであったため、絵師は九谷焼や、 輪島塗、加賀友禅の下絵の仕事に付いたと言われています。
 
 

明治時代以降の加賀友禅

明治になって、開国された日本では化学染料が次々と開発され、量産が可能な現在の型友禅(写し糊)や捺染プリントの基礎となった 染色技術「板場友禅」が生まれました。
 
 
戦前戦後の一時期、奢侈禁止令(贅沢を禁止する令)などによって、加賀友禅もかなりの打撃を受けた時期がありましたが、昭和28年宮崎友禅斎生誕300年祭の頃から再び盛んになりだしました。

昭和30年には木村雨山が、加賀友禅技法で重要無形文化財に指定され、加賀友禅で唯一の人間国宝も誕生しました。
 
 

近年の加賀友禅

近年の加賀友禅は工程の中に 数多くの手仕事の部分を残し、伝統の技法を大切に伝承しながら染色をしています。
 
 
日本の染色を代表する友禅の由来の人物である宮崎友禅斎が現在の加賀友禅の誕生に大きく関わっていたことが、歴史をひも解くと見えてきましたね。
 
 
そして同じく日本を代表する友禅の一つである京友禅とは何が違うのか紹介します。
 
 

加賀友禅と京友禅の違い

一般的に加賀友禅と京友禅の違いが言われているのは、着物に描かれる柄の構成と彩色方法です。

その違いを分かりやすく表にまとめてみました。

  加賀友禅 京友禅
使われる色 加賀五彩 多色
虫食い葉 あり 無し
ぼかし方 端が濃く中心が薄い 端が薄く中心が濃い
金、刺繍、絞り なし あり
彩色の特徴 武家好みの落ち着いた品のある美しさ 公家や豪商好みの豪華で華やな美しさ
作業方法 一貫性 分業制

 
 
以上のような違いがあげられますが、近年は必ずしも虫食い葉が描かれているわけでもなく、ぼかし方も一見ではわからない様々な柄の構成と色彩方法があり、素人では違いが分かりにくくなっています。

そのため、実際に加賀友禅と京友禅の着物を見分ける一つに、加賀友禅に貼られている証紙を見る方法があります。

加賀友禅の証紙

現在、加賀友禅の商品には下の画像のようなシール(証紙)が貼ってあるものがほとんどです。

加賀友禅とその他の友禅とを見分けるための大きなポイントになります。
 
 
まずは、経済産業大臣指定の伝統的工芸品の証である証紙「伝産マーク」

 
 
「手描き友禅」の証である赤の証紙
加賀友禅の赤の証紙「手描き友禅」
 
 
「板場友禅」の証である紫の証紙
加賀友禅の紫の証紙 「板場友禅」
 
 

板場友禅とは「型友禅」「加賀小紋染」とも呼ばれる技法のことで、型紙を使った友禅染で、高度な技による精緻で繊細な模様が求められるため職人の減少や製作工程などで一概に手描きとどちらが高価とは言えません。

 
 
以上の証紙を含めて最終的に貼られる加賀友禅の証の証紙
加賀友禅証紙
 
こちら証紙は、加賀染振興協会が発行しているもので、協会に落款登録している加賀友禅技術者の商品に貼付されます。

そのため協会に落款登録をしていない作家さんの商品にはこちらの証紙は付いていません。

加賀友禅作家とは加賀染振興協会に落款を登録している加賀友禅技術者の事をさします。
 
 
加賀友禅作家になるためには、工房を営む師のもとで7 年以上の修行を積んで技術・技量を身につけた後、加賀染振興協会の会員2 名(師匠と他1 名)の推薦を得て協会の会員資格を得て初めて加賀友禅作家になれます。
 
 
上の写真の証紙が貼られている着物は、厳しい修行のもとに技術・技量を身につけた信用ある作家さんによる正真正銘の加賀友禅だということが分かりますね。
 
 
以上が、加賀友禅の紹介でした。

加賀友禅は金沢市の伝統産業であり、観光資源でもある為、金沢市には作品の見学や試着購入や絵付け体験などができる加賀友禅会館などもあります。

 
 
又、金沢市外に在住の方に限り、ふるさと納税として、金沢の伝統工芸【加賀友禅】ペア体験利用券(工芸品付)という面白い商品もあります。

加賀友禅が作られている石川県金沢市は日本文化あふれる観光都市でもありますので、町のいたる所に加賀友禅にゆかりのあるものが伺えます。

憧れの加賀友禅を着て、金沢を観光するのも着物好きにとったら一度は体験したい最高の贅沢ですね。