【襟を正す】ということわざの元である着物の襟(衿)合わせ。

言葉通り襟(衿)合わせがきれいにできるだけで気持ちも引きまり、着姿全体がきれいに正される大切な部分です。

「襟」と「衿」の使われ方の違いですが、一般的には「襟」と書き、和装では「衿」と書くことが多いので、以降は衿で統一しますね。

 
 
そんな着物の衿合わせをする時に、

「幅や角度はいったいどれぐらいが正しいのだろう?」
「合わせた衿がゆるんだり、はだけたりしないコツは?」
「衿を寝かせるためには、どういう着方をすればよいの?」

など、きれいに合わせるための悩みは尽きませんね。

そこで今回は着付けの際に一番の悩みどころの着物の衿あわせのコツを紹介したいと思います。

着物の衿合わせできれいな角度と幅は?

着物の衿合わせでよく聞かれるのが、角度と幅です。

ですが衿合わせの角度と幅ってどこの角度と、どこからどこまでの幅なのか今一ピンと来ないので、私も初めの頃は意味が分かりませんでした。
 
 
そこで、写真を見ながら衿合わせの角度と幅を紹介します。
 

  • 着物の衿合わせできれいな角度
  • 着物の衿合わせできれいな幅

着物の衿合わせできれいな角度

一般的に言われている衿合わせの角度とは下の画像の部分の角度の事です。
衿合わせの角度
 
 
きれいな衿合わせで一番大切なのは長襦袢での合わせなので、画像の長襦袢の衿が重なる部分の角度を決めます。
 
 

きれいな角度は着物の種類や、その人の年齢や体形や好みによって変わってくるので、

「この角度が一番きれいな角度です」

とは言い切れません。

参考までに下記のような角度の合わせ方を紹介しますが、自分が一番きれいだと感じる角度を見つけると良いですね。

  • 留袖、訪問着などのフォーマル着物の衿合わせの角度
    約90度で、のどぼとけが隠れるぐらいの高い位置での衿合わせ。
  •  

  • 紬や麻などの普段着着物の衿合わせの角度
    約60度で、のどぼとけより低い位置での衿合わせ。
  •  

  • 若い人の衿合わせの角度
    約90度で、のどぼとけが隠れるぐらいの高い位置での衿合わせ。
  •  

  • 年配の人の衿合わせの角度
    約60度で、のどぼとけより低い位置での衿合わせ。
  •  

  • ふくよかな人の衿合わせの角度
    約60度で、のどぼとけより低い位置での衿合わせ。
  •  

  • ほっそりした人の衿合わせの角度
    約90度で、のどぼとけが隠れるぐらいの高い位置での衿合わせ。

 
 
おおよその自分にしっくりくる角度が決まったら、次はきれいな幅を合わせていきます。
 
 

着物の衿合わせできれいな幅

一般的に言われている衿合わせの幅とは下の画像の部分の出し幅(長襦袢の衿が合わさる部分から半襟の出し幅)の事です。
着物の衿合わせできれいな幅
 
 
衿合わせの出し幅は先に紹介した角度の違いや好みにより、きれいな出し幅が変わってきますので、こちらも一概にはどれが正解とは言い切れません。
 
 
参考までに着付けの唯一の国家試験と言われている『着付け技能検定の実技試験』では下記の幅で合わせるように指定されています。

半衿の出具合は(衿合わせの中心で)2cm ~2.5cm を目安とする。

こちらの検定の実技試験は振袖で行われるため、一般的に言われている普段着の出し幅の1.5cm ~2.0cm より少し多めの幅ですね。
 
 
年齢や体形別の衿合わせの出し幅は下記ぐらいに合わせると良いと言われています。
 

  • 年配の人やふくよかな人の衿合わせの幅・・・1.5cm ~2.0cm
  • 若い人やほっそりな人の衿合わせの幅・・・2cm ~2.5cm

 
 
以上のように着物の種類や、年齢、体型別により衿合わせの出し幅が変わってくるのが分かりますね。
 
 
衿合わせの角度を長襦袢の段階で整える事によって、後から行う衿合わせの幅もきれいに仕上がるので、長襦袢できれいに合わせるように心がけると良いですね。
 
 
次は実際に着付ける時に衿合わせの開きによる、ゆるみやはだけをしない着方の紹介をします。
 

着物の衿合わせでゆるみやはだけをしない着方

着付けの段階できれいな衿合わせができていても時間が経つにつれ、衿もとが開き衿合わせがゆるんだりはだけたりするのは、誰もが一度は経験すると思います。
 
 
衿もとの開きとは下の画像のように衿合わせがゆるんだり、はだけたりすることです。
衿もとの開き
 
 
きれいな衿もとは下の画像ですので、違いは一目瞭然ですね。

 
 
衿もとの開きの原因は様々ありますが、下記のような着付けの仕方で着崩れを最小限におさえることができます。
 

  • 衿合わせの胸の補正
  • 衿合わせの着付ける時の姿勢
  • 衿合わせのコーリンベルトや腰ひもの止め方
  • 衿合わせの衣紋抜きと伊達締めの大切さ
  • 着付けで解決できない衿合わせ

 
 

衿合わせの胸の補正

衿合わせだけでなく、着物を着付ける時に一番重要なのが補正の作業です。

補正をきちんと行う事により後の着崩れを最小限に抑えることができます。
 
衿もとが開く事による、ゆるみやはだけを防ぐ補正のコツは胸の補正を整える事です。
 
 

  • 胸が大きい人・・・和装ブラジャーなどで胸のふくらみを押さえる。
    ウエスト部分にタオルなどを当てて胸とウエストの厚みを均等(寸胴)にする。
  •  

  • 胸が小さい人・・・胸元にタオルなどを当てて鳩胸(はとむね)にする。
    もしくは、ウエスト部分にタオルなどを当てて胸とウエストの厚みを均等(寸胴)にする。

 
 

衿合わせの着付ける時の姿勢

何気なく行っている着付ける時の姿勢も、衿合わせの際に気を付けたいコツの一つです。

普段より下向き加減で着付けたり、逆に背中をそり過ぎた姿勢で着付けを行うと、普段の姿勢に戻った時に衿もとも動いてしまうのでゆるみやはだけの原因になります。

衿合わせをする時は、普段通りの自然な姿勢で前を向いて行うようにしましょう。
 
 

衿合わせのコーリンベルトや腰ひもの止め方

衿合わせの位置が決まったらコーリンベルトや腰ひもを使い固定をします。
 
 
腰ひも

 
 
コーリンベルト

 
 
固定する時にも、着崩れしない大切なコツがあります。

そのコツは腰ひもやコーリンベルトを付ける位置です。

自分の身体にあった位置に腰ひもやコーリンベルトを付けなければ、歩いたり座ったりとしている間に腰ひもやコーリンベルトがずれてしまいます。
 
 
腰ひもは「下過ぎ」コーリンベルトは「上過ぎ」に付けないように意識して、自分の身体の一番収まりが良い位置を見つけ付けるようにしましょう。

コーリンベルトにいたっては左右対称の高さと角度に気をつけて付ける事も大切です。
 
 

衿合わせの衣紋抜きと伊達締めの大切さ

腰ひもやコーリンベルトを付ける時に「衣紋抜き」という下の画像の小物を使うのも、きれいな衿合わせを維持するための一つのコツです。

衣紋抜きとはコーリンベルトなどを通す穴が付いていて、きれいに抜いた衿(衣紋)を固定するためのアイテムです。

 
 
衣紋とは下の画像の赤丸の部分の事です。
衣紋
 
 
衣紋抜きは衣紋を抜く時だけに必要と思われがちですが、衣紋も衿の一部なので、衣紋をきちんと固定することも大切です。
 
 
さらに、決めた衿合わせを固定するために下のような伊達締めで最後に固定をすると、決めた衿合わせがより固定されます。

 

伊達締めは正絹で織られた物が一番おすすめです。
お手入のしやすさからポリエステル素材でできた伊達締めもありますが、ポリエステル素材は滑るので、「締める」ことで着崩れを防止する目的の伊達締めとしてはあまり意味がありません。

 
 
伊達締めを締めるか締めないかで、後の衿の崩れ方が大きく変わってきます。
 
 
今まで腰ひもやコーリンベルトだけの使用で衿合わせが崩れてしまう人は、織りでできた伊達締めを締めてみることをおすすめします。
 
 
以上で着付けでの衿合わせのコツの紹介でしたが、何をしてもすぐ衿合わせがうまく行かない人は着付けだけの原因でないことが考えられます。
 
 

着付けで解決できない衿合わせ

何をしてもすぐに衿もとが開き、ゆるみやはだけが起きてしまう場合は長襦袢の寸法が合っていないことが多いです。

寸法が合っていない長襦袢を無理に引っ張って一時的に衿を合わせても、動いている間に寸法通りの位置に戻ってしまいます。
 
 
人にはそれぞれ下記のような体型の違いがあり、体型の特徴に合わせて長襦袢の寸法(身幅と抱き巾)を決めて仕立てます。

「上半身が大きくて下半身が小さい人」
「下半身が大きくて上半身が小さい人」
 
 
自分にあった長襦袢の寸法はプロの方でないと分からないものです。
 
思い当たる場合は悉皆屋(仕立て屋)に相談すると良いですね。
 
 

着物の衿合わせで寝かせる着方

着物の衿合わせの悩みで、

「どう頑張っても衿が立ってしまい、うまく寝かせることができない」

ということがあります。

衿の立ち加減も体型や好みによって変わってきますが、着物の衿が立っていると、首が短く見えて着姿全体のバランスが悪く感じます。

程よく寝ている衿の方がきれいに見えるので着方のコツを紹介します。
 
 
衿の立ちとはこの部分のこと。
衿の立ちとはこの部分

 
 
衿が立ったままだと、衣紋もきれいに抜けないため初心者っぽく見えてしまいがちです。
衿が立った

衿を寝かせる着方は、長襦袢の衿合わせの角度が重要です。
衿合わせの角度

上の画像の角度が大きい(60度より90度)ほど衿は寝やすいです。
 
角度を大きくしても衿が寝ない場合は肩にガーゼなどで当て布をして補正すると、より寝やすくなります。
 
 
どうしても寝かせれない場合は衿芯の素材が原因の場合があります。

プラスチックの衿芯を使っている場合は三河芯や、手作りの厚紙で作った自分サイズの衿芯など使ってみるのも一つのコツになります。
 
 
また、下の画像の部分の長襦袢を首にくっつけるか離すかによっても寝方が変わってきます。
着物の衿の寝かせ方
 
大げさに言うとこと、着物愛好家のikkoさんの衿合わせのように首から衿を離して合わせると、衿が寝やすく合わせられます。

同時に女性らしいなで肩を作ることができるので、いかり肩の人にはおすすめです。


 
 
ここまでは衿合わせのコツの紹介でしたが、最後は実際にどのように着付けたら良いのか紹介します。
 

着物の衿合わせのコツを活かした着方

きれいな着物の衿合わせのコツをもとに、角度や幅の合わせ方やゆるみ防止や寝かせる着方をまとめてみました。

きれいな角度の出し方

  • 留袖、訪問着などのフォーマル着物の衿合わせの角度
    約90度で、のどぼとけが隠れるぐらいの高い位置での衿合わせ。
  •  

  • 紬や麻などの普段着着物の衿合わせの角度
    約60度で、のどぼとけより低い位置での衿合わせ。
  •  

  • 若い人の衿合わせの角度
    約90度で、のどぼとけが隠れるぐらいの高い位置での衿合わせ。
  •  

  • 年配の人の衿合わせの角度
    約60度で、のどぼとけより低い位置での衿合わせ。
  •  

  • ふくよかな人の衿合わせの角度
    約60度で、のどぼとけより低い位置での衿合わせ。
  •  

  • ほっそりした人の衿合わせの角度
    約90度で、のどぼとけが隠れるぐらいの高い位置での衿合わせ。

 
 

きれいな衿合わせの幅

  • 振袖などのフォーマル着物の衿合わせの幅・・・2cm ~2.5cm
  • 普段着着物の衿合わせの幅・・・1.5cm ~2.0cm
  • 年配の人やふくよかな人の衿合わせの幅・・・1.5cm ~2.0cm
  • 若い人やほっそりな人の衿合わせの幅・・・2cm ~2.5cm

 
 

着物の衿合わせでゆるみやはだけをしない着方

  • 衿合わせの胸の補正
  • 衿合わせの着付ける時の姿勢
  • 衿合わせのコーリンベルトや腰ひもの止め方
  • 衿合わせの衣紋抜きと伊達締めの大切さ
  • 長襦袢の寸法の見直し

 
 

着物の衿合わせで寝かせる着方

  • 衿合わせの角度が大きい(60度より90度)ほど衿は寝やすい
  • 肩に補正を入れる
  • 首から離して衿合わせをする

 
以上を含めた衿合わせの詳しい着方を下の記事で説明しています。


 
 
こちらの記事は衿合わせの着方を写真付きで順番に紹介しているので、分かりやすいです。

また、衿合わせの開きから来るゆみみやはだけが起きた時に、出先で簡単に直せる方法も紹介していますので、いざという時に覚えておくと、いつもきれいな衿もとでいられます。
 
 
合わせて衣紋のきれいな抜き方を説明している下の記事も読んでおくことをおすすめします。

正面から見た衿合わせをよりきれいに着付けるためには、衣紋を上手に抜くコツを知ることも大切な事です。

 
 
以上が着物の衿合わせのコツやきれいな着方の紹介でした。

着付けで一番難しい部分と言っても過言ではない衿合わせをしっかりマスターすることで、着物全体の着崩れも防ぐこともできます。

人の目線に一番近い衿もとは意外に他人から見ても気になる部分でもあるので、

「あの人着付けがきれい」

といつでも衿もとを正した印象付けをしたいですね。