着物好きなら、

「いつかは一枚持ってみたい!」

と誰もが憧れる重要無形文化財の着物は、繊細で高度な染織方法で成り立つ、まさに日本がほこる芸術品とも言える着物です。
 
 
そんな染織方法の手間や後継者維持の観点から年間に作られる数も少ないため、貴重性も高く高価なので実物にお目にかかれるだけでも、かなりラッキーな着物。
 
 
いつかはと言いつつ、中々巡り合うことすら難しい着物ですが、どんな着物なのかを知っているだけでも価値があるものです。
 
 
今回は、そんな着物の重要無形文化財にはどんな種類があるのかや、その染織方法を紹介したいと思います。

 
 

着物の重要無形文化財は何がある?

着物の重要無形文化財とは、文化財保護法により文部科学大臣が指定した無形のわざ(技法・工程)によって作られた着物の事です。
 
 
現在、重要無形文化財の指定を受けた着物(染織部門)は下記の6種類があります。
 
 

  • 喜如嘉の芭蕉布
  • 宮古上布
  • 久米島紬
  • 久留米絣
  • 小千谷縮・越後上布
  • 結城紬

しかし、古くから伝承されるわざを使って作られる着物が重要無形文化財の指定を受けるには数々の厳しい要件をクリアして国から認定されなければなりません。
 
 
国家レベルで保護したい大切な日本のわざ(技法・工程)ですから、厳しくて当たり前ですよね。
 
 
そこで、

「重要無形文化財の指定したわざによって作られる着物」

と認定されるまでにはどのような要件があるのか詳しく見ていきましょう。
 
 

着物の重要無形文化財の指定を受けるまでの要件

重要無形文化財の着物と認定されるには、下記の要件をクリアして、まずはわざに対しての指定を受けなければなりません。

  • 芸術上特に価値の高いもの
  • 工芸史上特に重要な地位を占めるもの
  • 芸術上価値が高く、又は工芸史上重要な地位を占め、かつ、地方的特色が顕著(けんちょ)なもの

 
 
そして指定をクリアした重要無形文化財は、そのわざを高度に体得している個人または団体に認定されるのですが、その詳細は下記の3パターンに分かれれます。

  • 個人を個別に認定・・・・「各個認定」
  • 2人以上の者が一体となってわざを体現している場合に、保持者の団体の構成員を総合的に認定・・・・「総合認定」
  • 個人的特色が薄く、かつ、多数の者が体得しているわざが全体として1つの無形文化財を構成している場合に、その人々が構成員となっている団体を認定・・・・「保持団体認定」

 
 
個人で認定をうけた重要無形文化財の保持者は通称「人間国宝」の人たちのことですが、実は文化財保護法には「人間国宝」という文言はありません。
 
 
一般的に人間国宝と言われると、何となく歌舞伎などの芸能関係を思い浮かべることが多いですが、着物に関わる染織部門にも人間国宝は沢山見えます。

しかし、着物の場合

「人間国宝の作った着物」

として、わざの価値が高い重要無形文化財としてではなく、個性の強い作家物としての認識が強いように感じます。
 
 
そのため、俗に言われる着物の重要無形文化財は地域性(産地)の強い保持団体に認定された着物の事を指します。
 
 
古くから伝わるわざを、その産地の方々で大切に伝承している団体に認定された着物の重要無形文化財が先ほど紹介した下記の6種類ということですね。
 
 

  • 喜如嘉の芭蕉布
  • 宮古上布
  • 久米島紬
  • 久留米絣
  • 小千谷縮・越後上布
  • 結城紬

 
 
重要無形文化財に団体として認定される基準として、

「その分野において高い技術を要し、伝承意欲があり後世に伝えていく必要な態勢を整えている団体」

というものがあります。
 
 
それぞれの着物の名前を見てわかるように、その着物が作られている産地名が付けられていることから、地域で大切に伝承されている着物ということが分かりますね。
 
 
そしてこれらの着物の保持している団体が指定を受けているわざ(技法・工程)は、それぞれの産地のでしかできないものなどがあります。
 
 
そこで、指定を受けてる着物別についてもう少し詳しく紹介したいと思います。
 
 

着物の重要無形文化財の指定内容

国の指定を受けて、重要無形文化財のわざ(技法・工程)により作られた6種類の着物には、保持している団体ごとに指定要件が異なります。
 
 
その着物の産地の自然環境や地域性をもとに伝承されたわざは、その着物独特の染織方法ということですね。

古くからの染織方法を守るために重要無形文化財に指定された着物は、いつどこの団体がどのような指定要件で認定されたのか下記の4つの項目に分けて紹介します。

  • 指定年
  • 産地都道府県名
  • 指定条件
  • 団体名称

 
 

■喜如嘉の芭蕉布

指定年 1974年
産地都道府県 沖縄県大宜味村の喜如嘉
指定条件
  • 糸芭蕉により苧績みした糸を使用する事
  • 染織は植物染で染める事
  • 絣模様は手括り(くくり)絣である事
  • 手織である事
団体名称 喜如嘉の芭蕉布保存会

 
 
 
■宮古上布

指定年 1978年
産地都道府県 沖縄県宮古島
指定条件
  • 全て苧麻を手紡ぎした糸を使用する事
  • 絣模様を付ける際は、伝統的な手結による技法、または手くくりによる事
  • 染織は純正植物染である事
  • 手織りである事
  • 洗濯(仕上げ加工)の場合は木槌による手打ちを行い、使用する糊は天然の材料を用いて調整する事
団体名称  宮古上布保持団体

 
 
 
■久米島紬

指定年 2004年
産地都道府県 沖縄県久米島
指定条件
  • 糸は紬糸又は引き糸を使用する事
  • 天然染料を使用する事
  • 絣糸は手くくりである事
  • 手織りである事 
団体名称 久米島紬保持団体

 
 
 
■久留米絣

指定年 1957年
産地都道府県 福岡県久留米市
指定条件
  • 手くびりによる絣糸を使用する事
  • 純正天然藍で染める事
  • 投げ杼の手織織機で織る事
団体名称 重要無形文化財久留米絣技術保持団体

 
 
■小千谷縮・越後上布
小千谷縮・越後上布

指定年 1955年
産地都道府県 新潟県小千谷・南魚沼市(旧塩沢町・六日町)
指定条件
  • 全て苧麻を手績みした糸を使用する事
  • 絣模様を付ける際は、手くびりによる事
  • いざり機(地機)で織る事
  • シボとりをする場合は、湯もみ・足ぶみによる事
  • 晒し(さらし)は雪ざらしによる事
団体名称  越後上布・小千谷縮布技術保存協会

 
 
 
■結城紬

指定年 1955年
産地都道府県 茨木県結城市・栃木県小山市
指定条件
  • 使用する糸は全て真綿より手紡ぎしたものとし、強撚糸を使用しない事
  • 絣模様を付ける際は、手くびりによる事
  • いざり機(地機)で織る事
団体名称 本場結城紬技術保持会

 
 

以上が、重要無形文化財の指定を受けた着物の詳細でしたが、着物ごとに

  • 使われる糸の作り方
  • 染め方
  • 模様の付け方
  • 織り方
  • 仕上げの仕方

など細かな指定があるのが分かりましたね。

そして、認定を受けている6種類の着物のうち3種類の半分が沖縄県にあり、シルクロード(絹の道)を通じて中国や朝鮮半島から、沖縄に染織技術(わざ)が伝わったことを示しているかのようです。
 
 
重要無形文化財の着物には様々な条件があり、少し難しく感じたかもしれませんので、最後に着物の重要無形文化財についてのまとめたものを紹介します。
 
 

着物の重要無形文化財についてのまとめ

着物の重要無形文化財とは・・・・歴史上の価値が高い無形(わざ)の文化を保持するために国が指定した物のことです。
 
 
重要無形文化財の指定を受けるには・・・・下記の指定要件をクリアしなければなりません。

  • 芸術上特に価値の高いもの
  • 工芸史上特に重要な地位を占めるもの
  • 芸術上価値が高く、又は工芸史上重要な地位を占め、かつ、地方的特色が顕著(けんちょ)なもの

 
 
指定をクリアした重要無形文化財は、そのわざを高度に体得している個人または団体に認定されます。
 
 
着物の重要無形文化財と言われるものは、保持団体に認定された下記の6種類があります。

  • 喜如嘉の芭蕉布
  • 宮古上布
  • 久米島紬
  • 久留米絣
  • 小千谷縮・越後上布
  • 結城紬

 
 
それぞれの認定を受けた指定要件は下記ような内容です。
 
 
■喜如嘉の芭蕉布

  • 糸芭蕉により苧績みした糸を使用する事
  • 染織は植物染で染める事
  • 絣模様は手括り(くくり)絣である事
  • 手織である事

 
 
■宮古上布

  • 全て苧麻を手紡ぎした糸を使用する事
  • 絣模様を付ける際は、伝統的な手結による技法、または手くくりによる事
  • 染織は純正植物染である事
  • 手織りである事
  • 洗濯(仕上げ加工)の場合は木槌による手打ちを行い、使用する糊は天然の材料を用いて調整する事

 
 
■久米島紬

  • 糸は紬糸又は引き糸を使用する事
  • 天然染料を使用する事
  • 絣糸は手くくりである事
  • 手織りである事 

 
 
■久留米絣

  • 手くびりによる絣糸を使用する事
  • 純正天然藍で染める事
  • 投げ杼の手織織機で織る事

 
 
■小千谷縮・越後上布

  • 全て苧麻を手績みした糸を使用する事
  • 絣模様を付ける際は、手くびりによる事
  • いざり機(地機)で織る事
  • シボとりをする場合は、湯もみ・足ぶみによる事
  • 晒し(さらし)は雪ざらしによる事

 
 
■結城紬

  • 使用する糸は全て真綿より手紡ぎしたものとし、強撚糸を使用しない事
  • 絣模様を付ける際は、手くびりによる事
  • いざり機(地機)で織る事

 
 

各種類の指定条件はどれも、昔は当たり前に行われていた技法や工程ですが、文明の力によって効率化や量産性が可能になった現代では、とても高度な技術と手間のかかる作業になってしまいました。

自然の恵みや知恵からできた当たり前の技法や工程が「わざ」として大切に伝承されるようになる一方で、その伝承は難しく衰退の一途をたどっています。
 
 
資源や職人の減少にともない、ほとんどの重要無形文化財の着物は一年に数枚しか作れないのが現状で、とても勿体ないことです。

 
 

着物として価値のあるものが欲しい着物ファンの思いと裏腹に、益々高価になって行く重要無形文化財の着物たちです。

その価値や、貴重性をもっと多くの人が知ることで、少しでも現状が変わると嬉しいですね。