名古屋帯

名古屋帯は袋帯よりカジュアルな格付けなので、小紋や紬などの普段着にはもってこいの帯です。

※格とは、そのものの値打ちによってできた段階・位・身分・等級などを表すものです。

帯の場合は、帯の「種類」「文様」「着物との組み合わせ」など様々な違いで格が変わってきます。

 

正装では使えませんが、施されている柄の種類や結び方で準礼装になるので使用用途が広いことから人気のある帯でもあります。

しかし一言で名古屋帯と言っても、反物の違いや仕立て方の違いで様々な種類があるので、いざ使用しようと思っても初心者には分かりにくいですね。
 
 
今回はそんな名古屋帯に注目して、帯の長さや仕立て方など

「名古屋帯とはどんな帯?どんな種類があるの?」

を、紹介したいと思います。
 
 

名古屋帯とはどんな帯?

大正期の服装改善運動中に、現代の名古屋女子学校の創立者によって考案されたことから、名古屋帯と呼ばれるようになりました。
 
 

服装改善運動とは大正期に始まる生活改善運動の一環として推し進められた、

「従来の和服の機能面および衛生面の「欠陥」をいかにして克服するか」

という服装の合理化を目的とした運動です。

生活改善運動は、明治以来の生活様式の「改良」を実現しようとする国家的プロジェクト。

 
 
従来からある袋帯より、長さを短くすることで太鼓結びが一重でできるようになり、軽くて締めやすい帯として周知されます。
 

 
 
当初は染め帯が主流でしたが人気が高まるに連れて織り帯も作られるようになり、使用用途も下記にように広がりました。
 
 

■金糸銀糸を使用したもの・・・訪問着、付け下げ、色無地に合わせて準礼装

 
 
■その他のもの・・・洒落訪問着、小紋、紬などのお洒落着や普段着

 
このように衣服の簡略化を目的として考案された名古屋帯は、長さや幅は実際にはどのぐらいあるのか紹介したいと思います。

二重太鼓で結ぶ正装用の袋帯との違いも分かりやすく紹介します。

名古屋帯の長さや幅は?

従来の袋帯を省略化して

「もっと簡単に結びたい」

という考えから生まれた名古屋帯は、下のように長さや幅が少しずつ小さい作りになっています。
 
 

袋帯の長さと幅・・・・長さ約450cm×幅約31.2cm

名古屋帯の長さと幅・・・・長さ約380cm×幅約30.4cm

 
名古屋帯の長さと幅
 
帯幅はそれほど変わりませんが長さが約1mほど短いので、帯結びもしやすく扱いやすいのが分かりますね。
 
 
実際に着付けをしていても、袋帯より名古屋帯の方が時間的にも早く着付けることができるので、ちょっとしたお出かけの普段着にもってこいです。
 
 
上にあげた袋帯と名古屋帯の図は、形の違いが分かりやすいように開いた状態で仕立てた名古屋帯です。
 
他にも名古屋帯には仕立て方の種類が沢山あり、帯結びのアレンジや体形の違いで仕立て方を変えることができます。
 
 
自分の使用用途に合った仕立て方をして、より使いやすい帯にするためにも名古屋帯の仕立て方の種類を紹介します。

名古屋帯の仕立て方の種類は?

名古屋帯には大きく分けて下の2種類があり、種類別に仕立て方が変わってきます。

■九寸名古屋帯・・・・仕立て前の帯幅が、約35㎝。
クジラ尺で約9寸である事から九寸名古屋帯と言われ、芯を付けて両端を織り込んで仕立てます。

■八寸名古屋帯・・・・仕立て前の帯幅が、約30㎝。
クジラ尺で約8寸である事から八寸袋名古屋帯と言われ、芯なしでかがるだけで反物幅のままで仕立てます。

別名「袋名古屋帯」「八寸帯」「かがり帯」などと呼ばれます。

名古屋帯の仕立ての方法

 
 
この2種類は仕立て前の幅が違うものの、仕立て上がりの幅(お太鼓部分)は共に約30cmと同じで格は九寸名古屋帯の方が高いです。
 
 
九寸帯と八寸帯共にいくつかの種類の仕立て方があり、特徴も様々あるので格の高い九寸名古屋帯から順番に紹介します。
 
 

九寸名古屋帯の仕立て方

九寸名古屋帯の仕立て方は、主に下の4種類があり見た目の形も特徴も違います。

  • 名古屋仕立て
  • 松葉仕立て
  • 東京仕立て
  • 開き仕立て

 

9寸名古屋帯仕立て

 
形は全く違いますが、帯の締め方のアレンジは全部同じ形を作れる仕立てです。

それぞれの種類別に詳しく紹介します。
 
 

名古屋仕立て 最も一般的な仕立て方で名古屋帯と言ったらこちらの仕立てにすることが多いです。

胴に巻く部分を半分に折って縫い付けるので、着付けの際に前幅の幅出しができないため背の高い方やふくよかな方は避けた方が良いでしょう。

あらかじめ胴の部分が半分になっているので、前幅の調節が苦手な着付け初心者にはおすすめです。

松葉仕立て 着付けの際にお太鼓に隠れる程度の15cm位の手先だけをかがり、残りはお太鼓幅に仕立てます。

前幅を自分で調節できるため、背の高い方やふくよかな方でも締められます。

必要最低限の長さの手先をかがっていて、後は自由に前幅も調節できるので一石二鳥の初心者におすすめな仕立てです。

東京仕立て 見た目は袋帯と同じ形をしていますが、裏の芯が見えっぱなしになります。

そのため、帯地に似た色の裏芯を付けて全体をお太鼓幅で仕立てるので、前幅を自分で調節したい場合におすすめです。

平にたためるので、収納も楽です。

開き仕立て 東京仕立てにシンモスなどの裏地をつけた仕立てになります。

ふくよかな方が帯の長さを増すときに足し布をしやすいのも、開き仕立ての名古屋帯の特徴です。

 
 
八寸名古屋帯に比べて九寸帯は帯幅が広いので、裏に芯を付けて両端をかがるので帯の生地が比較的薄いことが特徴です。

基本は普段着用の帯ですが、金糸銀糸が施された柄なら準礼装として色無地や附下・訪問着にも着用できます。

「袋帯ではちょっと格が高すぎかな」

というような場面にはもってこいの帯ですね。

八寸名古屋帯の仕立て方

九寸名古屋帯の仕立て方は、主に下の3種類があり見た目の形も特徴も違います。
 
 

  • 総かがり仕立て
  • 松葉仕立て
  • トンネル仕立て

 
 
八寸名古屋帯も形は全く違いますが、帯の締め方のアレンジは全部同じ形を作れる仕立てです。

九寸名古屋帯と違いたれ先を約114cmほど折り返し両端をかがって仕立てるので、裏地は付きません。

八寸名古屋帯の場合は松葉仕立てが一般的に多く使われますが、それぞれの種類別に詳しく紹介します。

総かがり仕立て お太鼓、胴(前幅)全てをかがります。

胴に巻く部分を半分に折って縫い付けるので、着付けの際に前幅の幅出しができないため背の高い方やふくよかな方は避けた方が良いでしょう。

あらかじめ胴の部分が半分になっているので、前幅の調節が苦手な着付け初心者にはおすすめです。

松葉仕立て 着付けの際にお太鼓に隠れる程度の38cm位の手先をかがり、残りはお太鼓幅に仕立てます。

前幅を自分で調節できるため、背の高い方やふくよかな方でも締められます。

必要最低限の長さの手先をかがっていて、後は自由に前幅も調節できるので一石二鳥の初心者におすすめな仕立てです。

トンネル仕立て 垂先から20~30cm程度と垂境から約10cmをかがり、お太鼓をトンネル状にします。

お太鼓中心をかがらないので見た目にも涼しく、夏帯の絽や紗にトンネル仕立て方をする場合があります。

松葉かがりの様に手先のみ短くかがる場合もあります。

 
 
上記の説明にもあるように、垂れを折って両側をかがるだけなので、八寸帯は自分で仕立てる人もいるぐらい手軽な感覚の帯です。

八寸帯は芯を付けずに生地だけで仕立てるので、生地そのものは厚めですが仕立て上がりは軽くて扱いやすいです。

九寸名古屋帯より格下で、一般的には下のように普段着向け・街着向け等のカジュアル着物に合わせます。

  • 小紋
  • 訪問着

最近はおしゃれな柄も多く、大島紬などの紬の訪問着にもピッタリですね。

以上が名古屋帯の仕立て方の種類の紹介でした。
 
 
着物の帯には礼装用から普段着用まで様々な種類があり、使える場面や合わせる着物の種類に迷ってしまう場合があります。

そんな時は下の記事を参考にすると帯の違いが分かり、使用場面や着物に合った帯選びをすることができます。


 
 
他にもいろいろな帯結びを紹介している下の記事も、太鼓結びの他にもアレンジを加えたい時などにおすすめです。

着物が普段着ではなくなった現代だからこそ、より気軽に着物を着るために着物の価値感や決まり事などが年々変わってきています。

昔ほど厳格な決まりがなくなっている現代は、着物をおしゃれ着として楽しむ若者も多くなり名古屋帯の需要も益々増えると思います。
 
 
出番も多い普段着扱いの名古屋帯を上手に使い回し、日々の着物生活の幅が広がると良いですね。

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