東京染小紋というと、

「名前のごとく東京で染められた小紋の事だろうな」

とは予想が付き、粋な染のイメージが強い東京染小紋です。
 
 
そして、東京の染小紋と言ったら、どうしても江戸小紋を思い浮かべてしまいますが、実は江戸小紋以外にも

「えー!そうなんだ!」

と思ってしまう種類の着物も作られています。

そんな東京染小紋の歴史や模様の特徴や、気になる値段はどうなっているのかを紹介します。
 
 

東京染小紋とはどんな着物?

東京染小紋は、型彫りをした型紙を使い東京で染められる小紋のことで、昭和51年に経済産業大臣指定伝統的工芸品の指定を受けている伝統的な技法によって作られている着物です。
 

 

小紋とは室町時代から伝わり、江戸時代に広く行き渡った型染めのことです。

大紋型染め(だいもんがたそめ)、中型染め(ちゅうがたそめ)に対して、細かい模様(小紋)の型染めのことを「小紋型染め」と呼んでいたことから現在に至ります。

 
 
現在東京には同じ染めでも、東京友禅がありますが大まかに区別するなら、小紋は型紙を使って染めて友禅は型紙を使わず友禅と言われる技法で染めるということです。

小紋に使用される型紙は、錐(きり)と小刀(こがたな)を使って文様を彫っていきます。
伊勢型紙

彫り方の種類は下記の4種類等あり、

  • 錐彫り(きりぼり)
  • 突き彫り
  • 引き彫り
  • 道具彫り

その匠な技術を持った職人は国の重要無形文化財の保持者として、ぞくに言われる「人間国宝」に認定されている人も見えるぐらいです。
 
 
型紙は一度に7・8枚重ねて、長さ13cm×幅40cmの間に彫り、細かい柄で3cm平方に千個以上の穴をあけて作られるものがあります。
 
下の画像は伊勢型紙の人間国宝の六谷梅軒さんが彫った型紙です。
 
六谷梅軒 伊勢型紙
 
 
同じ柄の模様を一寸狂わず繋げて彫る型紙は、まさに日本が国をあげて保存したいほどの、繊細で高度な技術のわざと言えますね。
 
 
ちなみに、現在一枚の型紙を彫ってもらうのに二週間ほどかかり料金は30万円ほどだそうですが、人間国宝の方の型紙だともっと高価になるでしょうね。
 
 
このような匠のわざを使い作られた型紙一枚を、今度は一反約13mにも及ぶ着物の反物に当てて防染(染まらないように糊を置くこと)して、ふちから順番に柄を染めて行きます。

 
 
この工程も、型紙の模様が13mにも及ぶ反物全体に、一寸も狂わず繋げて染めなければいけない、気の遠くなるようなわざが必要になります。
 
 
こうした工程によって作られる、東京染小紋は現在は東京都染色工業協同組合によって管理、伝承されています。
 
 
東京都染色工業協同組合は「小紋会」と「浸染会」の二つの団体からできていて、東京染小紋は「小紋会」により作られています。
 
 
小紋会では下記の染を扱っていて、東京染小紋と言われるものは、こちらの三種類の着物のことですね。

江戸小紋 東京染小紋 江戸更紗

 
 
この三種類の小紋の違いは何なのか。

特に、「江戸小紋」と「東京染小紋」とは何が違うのかよく分かりませんね。

こうした疑問を解決するには、その着物ができた歴史を学ぶと、背景が見えてきて理解しやすくなるものです。

種類の違いをひも解くためにも、各種類の歴史から見ていきましょう。
 
 

東京染小紋の歴史

小紋は室町時代に始まり、江戸時代初期に武士の裃(かみしも)に染められるようになったことで、大きく発達しました。
 
裃とは時代劇でよく見かける大名が着ている下の画像の形をした衣類の事です。(なんとアマゾンで売っているのを発見しました)
 

 

今でいう江戸小紋で、一見して一色の無地に見えるけど、よく見ると細かな模様が型染されているもので、大名ごとに模様が決められていました。
 
 
当時の江戸には、各地域から大名が訪れた時用に大名ごとの屋敷があったため、多くの武士が集まる様になり裃の需要も増えたと言われています。
 
 
合わせて、江戸には小紋を染める過程で大量に必要になってくる「きれいな水」として神田川が流れていたので、多くの染め屋が集まり、現在の東京染めが発展しました。
 
 
下の画像は隅田川で昭和30年まで実際に行われていた、糊落とし(水元)の風景です。

 
 

はじめは裃だけの小紋染でしたが、江戸時代中頃から小紋染は庶民にも浸透し、着物や羽織等に染められるようになりました。
 
 

しかし、明治時代の初めに下された断髪令や、洋服が入ってきたことにより男性の小紋の需要は大幅に減りました。

一方で女性の小紋染は、江戸中期にインド更紗の影響を受けた日本独自の更紗染もはじまり、明治中頃には草花模様の訪問着などもできました。

小紋は着物の種類としてではなく、小さい模様の染め物としてとらえると、訪問着にもできます。

 
 
こうして、一色染めの東京染小紋に色鮮やかな江戸更紗なども加わり、現代に受け継がれてきたですね。
 
 
次は、現在まで残る東京染小紋の、「江戸小紋」「東京染小紋」「江戸更紗」の3種類ごとに模様や特徴などを見ていきましょう。
 
 

東京染小紋の特徴や江戸小紋との違いは?

歴史をひも解くと見えてきた東京染小紋の3種類ですが、そもそも江戸小紋から始まった東京染小紋の種類に東京染小紋が入っていたりと、少し混乱しますよね。

そこで、分かりやすいように下記の3種類別に模様や特徴、色使いなどを表にしてみました。

  • 江戸小紋
  • 東京染小紋
  • 江戸更紗

 
 
■江戸小紋

模様・特徴
遠目には無地に見えるが近づくと、細かな模様が染められています。

江戸小紋には多くの種類の模様が存在しますが、下の画像の「鮫」「角通し」「行儀」の3種類を江戸小紋三役といい、江戸小紋の中でも一番格の高い模様になります。
 
鮫(さめ)
 鮫(さめ)
 
角通し(かくとおし)
角通し(かくとおし)
 
行儀(ぎょうぎ)
行儀(ぎょうぎ)
 
上記三役にプラスして、下の画像の「大小(あられ)」「万筋(まんすじ)」が加わると、江戸小紋五役と言って他の江戸小紋よりも格が上がる種類になります。
 
大小(あられ)
大小(あられ)
 
万筋(まんすじ)
万筋(まんすじ)
 
 
上記江戸小紋五役に紋を入れると『略礼装』になると言われています。

一色

 
 
■東京染小紋

模様・特徴
武士の礼装であった小紋の「角通し」の模様が、江戸時代になると庶民の間でも流行して、江戸小紋へと発展していきました。

それがさらに進化して、様々な模様で遊び心がある小紋を「染小紋」と呼び、現在、東京で型彫りをし染められる染小紋は「東京染小紋」と呼ばれています。
 
 
模様が小さくシンプルな物の繰り返しから作られる東京染小紋は、江戸っ子を連想されるような粋な色使いで個性あふれた小紋染めになります。

 
上品で洗練された色使いの模様で染められた東京染小紋は、普段着から軽いお茶会などに使える略礼装としても使われます。

一色または多色

 
 
■東京更紗

柄・特徴
シルクロードを通じて日本に更紗が伝わったのは室町時代の頃にさかのぼります。
 
江戸時代中期に更紗専門の型紙刷り師が、日本の風土と独特の美意識を加えた模様を作ったことで、江戸更紗が有名になりました。
 
 
更紗は国ごとの独特な模様や色彩などが入りまじった染めのことで、インドから始まったインド更紗の他に、ジャワ更紗、ペルシャ更紗、シャム更紗などがあります。
 
 
日本の更紗は「和更紗」とも言われ、江戸(東京)の他に、現在は京都、堺、長崎、鍋島、などでも作られています。
 
 
更紗の模様は草花、鳥獣、人物等を図案化したものが多いため、色使いも多く簡単な模様でも20~30枚の型紙を使い何度も色を変えて染めて行きます。

 
 
一色使いの江戸小紋などを一寸の狂いもなく模様をつなげていく作業も大変ですが、色や模様ごとに型紙を変えて、それをつなげる作業も考えただけでも難しく手間のかかる作業なのが分かりますね。
 
 
そんな繊細な作業を必要とする江戸更紗は普段着用の小紋として使えますし、模様の置く位置で訪問着にもなるので正装としても使えるものまであります。
多色

 
 
上記であげた東京で作られている染小紋全てまとめて東京染小紋と言われることもありますので、江戸小紋は東京染小紋の中の一ブランドとして考えれば分かりやすいですね。
 
 
現在、東京都染色工業協同組合のHPでは東京染小紋を動画(下)で紹介してくれています。
 
 
■江戸小紋・東京染小紋

 
 
■江戸更紗

 
 
また、全国各地の伝統的工芸品が一堂に集まる日本唯一のギャラリー&ショップの伝統工芸 青山スクエアさんでも動画で東京染小紋の事を紹介してくれています。

 
 
この記事では紹介しきれない、歴史や染められる工程が分かりやすく紹介されているので、より深く東京染小紋の魅力が伝わると思います。
 
 
ここまでの歴史や特徴を見て、東京染小紋が魅力的に感じてきたら、やはり一番知りたいのは値段ですよね。

現在はいくらぐらいするのか調べてみました。
 
 

東京染小紋の値段

繊細で高度なわざによって作られる東京染小紋は、やはり高価なのは想像つきますが、実際はどのくらいの値段なのか3種類ごとに分けて紹介します。

  • 江戸小紋
  • 東京染小紋
  • 江戸更紗

 
 

江戸小紋の値段の相場

江戸小紋の値段は反物の状態で15万円程からありました。
江戸小紋
 
 
江戸小紋の人間国宝や有名作家さんの作品だと30万円程からありました。
江戸小紋六谷梅軒
 
 
江戸小紋は、普段着から模様の種類によっては準礼装にまで幅広く使える着物です。

初めての着物は江戸小紋からと言われるほど、使い勝手の良く使用頻度が多い種類と考えると、一枚は持っていたいですよね。
 
 

東京染小紋の値段の相場

東京染小紋の値段は伝統工芸士の方が手掛けた反物の状態で10万円ほどからあります。
東京染小紋
 
 
長年の経験と匠のわざを持つ伝統工芸士の方が手掛けた着物が、この値段から誂えることができるのは、高度なわざと一点一点手染めで作られる手間を考えたら、決して高くない値段ですね。
 
 

江戸更紗の値段の相場

江戸更紗と言えば、江戸末期から続く江戸更紗の老舗「更勝(さらかつ)」さんの着物が有名ですね。

更勝さんの江戸更紗は反物の状態で30万円ほどからあります。
更勝

現在、江戸更紗自体が年に数枚しか作られない希少な着物のうえ、工房では、オリジナルオーダー品も作ってくれるので、そちらの着物だともっと高値です。
 
 
しかし、簡単な模様でも20~30枚、複雑な模様だと300枚ほどの型紙の種類が必要となり、型紙の数だけ約13m分の染を繰り返す手間を考えたらこちらの値段でも納得しますよね。
 
 
以上が東京染小紋の値段ですが、今回紹介した着物は全て手作業で、手染めの着物の値段です。
 
 
現代は手染めではなくて、量産の機械染めで作られる「写」と言われる種類の着物があります。

  • 江戸小紋写
  • 東京染小紋写

上記のように表記されている着物ですね。
 
 

こちらの着物だと、値段は一気にお手軽になり、安い店だと2~3万円ほどで売られています。
 
 
自分では手染めと思って購入したつもりで、

「とてもお得に手に入れられた!ラッキー」

と思っていても、実は機械染めの「写」だったという話もよく聞きます。

自分では手染めの着物か、機械染めの着物かわからいときは、お店の人に確認してから購入すると良いですね。
 
 
以上が東京染小紋の紹介でしたが、着物の歴史や工程を詳しく聞くと、その着物が欲しくなるのは着物好きあるあるです。
 
 
今回紹介したことを思い浮かべながら、自分好みの模様を検索してみるのも楽しいですよね。