一言に結城紬といっても、工程の違いで値段もピンからキリまであり着物初心者では中々見分けがつかないものです。

「三代着て味が出る」

と言われるほど丈夫で味のある風合いが特徴の結城紬は、昔ながらの技法によって作られた本場結城紬です。
 
 
一般的に「本場」と言われる結城紬は、組合の検査機関を通過した結城紬をさす場合が多いです。
 
そして「本物」と言われる結城紬は国の無形文化財の技法で作られたものをさす場合が多いです。

しかし組合の検査機関を通過した結城紬なら、無形文化財の技法で作られていない物でも、「本物」と言う人もいます。

このような背景からすると「本場」と「本物」定義はあいまいで、個々の判断に委ねられて、重要無形文化財が本物でそれ以外が偽物という話でもないような気がします。
 
 
「これは本場結城紬です。」

と言われたので、重要無形文化財の技法で作られた結城紬と思って購入した物が、実は違っていた。

と、なっても「本物」という言葉が偽りだということにはならないのが、この業界のまぎらわしいところです。
 
 
そのため、自分が求めている結城紬がどのような手法で作られているのかをしっかり把握することが大切になります。

後は、その反物が自分が求めてる結城紬かどうかを見分ける方法を知れば良いのですね。

それを見分ける方法の一つが、反物に付いている証紙を見て判断する方法です。
 
 
ちまたでよく目にする結城紬の証紙には、「結マーク」と「紬マーク」の二種類あります。
 
■結城紬の証紙「結マーク」
結城紬結マーク証紙
 
 
■結城紬の証紙「紬マーク」
結城紬証紙紬マーク
 
 
この二種類の証紙の内容を見分けれるようになると、その反物がどのような内容な物なのかが、分かるようになります。

そこで今回は、この二種類の証紙の見分け方を紹介します。
 
 

結城紬の証紙「結マーク」と「紬マーク」の違いは?

結城紬には下の、「結マーク」と「紬マーク」があるのですが、この二つはとても似ていますが、よく見ると微妙に違います。
 
 
■結城紬の証紙「結マーク」
結城紬結マーク証紙
 
 
■結城紬の証紙「紬マーク」
結城紬証紙紬マーク
 
 
ぱっと見た違いは「結」と「紬」という文字の違いと、真ん中に描かれている女性の違いです。

この違いは、二つの証紙を発行している組合の違いです。

上の「結マーク」は本場結城紬卸商協同組合が発行する物

下の「紬マーク」は茨城県結城郡織物協同組合が発行する物

 
 
組合の違いで証紙が変わってくるのですが、もう少し細かい違いをそれぞれ紹介していきます。
 
 

結城紬の証紙「結マーク」とは

結城紬の「結マーク」とは、下のような厳しい段階をクリアした反物に貼られる証紙のことを言います。

①「茨城県本場結城紬織物協同組合」と「栃木県本場結城紬織物協同組合」に加盟していること。

②本場結城紬検査協同組合にて検査に合格すること。

③その後、産地問屋に納めることで本場結城紬卸商協同組合の証紙が貼付されます。

 
 
本場結城紬検査協同組合検査に合格して、本場結城紬卸商協同組合を介した反物は下の「結マーク」の証紙が貼られます。
 
 
糸の種類の違いや、機の違いで証紙の種類が変わっています。
 
 
■地機で平織りされた反物に付く証紙
結城紬証紙地機平織り
 
 
■地機で縮織りされた反物に付く証紙
地機縮織り
 
 
■高機で平織りされた反物に付く証紙
高機平織り
 
 
■高機で縮織りされた反物に付く証紙
高機縮織り
 
 
■本場結城紬検査協同組合の組合員のロゴ一覧
結城紬卸業協同組合
 
 
ここまでの証紙の画像が結城紬の「結マーク」と言われるものです。
 
 
そのうちの下の画像の左側の丸い合格証と割印が押された右側の証紙が、本場結城紬検査協同組合の証紙です。
 
結城紬証紙
 
 
「結マーク」の真ん中の証紙4枚が、本場結城紬卸商協同組合が品質を保証している証紙です。
 
結城紬結マーク証紙
 
 
どちらの証紙もよく見ると内容が違うので、理解しやすいようにもう少し詳しく紹介します。
 

本場結城紬検査協同組合の証紙

本場結城紬検査協同組合検査に合格すると、反物の織り始めのカシャゲ(白い太い糸を織った部分)の左側に合格証を、右側に証紙を貼り付け、割印が押されます。

この証紙は、下のような厳しい検査(16項目)に合格したものに貼り付けられ、種類によって違った証紙が貼り付けられます。

  • 長さ
  • 打ち込み本数
  • 模様ずれ

 
 
■地機の平織り
結城紬証紙
 
 
■地機の縮織り
結城紬の証紙.
 
 
■高機の平織り
結城紬の証紙
 
 
本場結城紬検査証では、どのような技法により作られたものかわかるようになっていますね。
 
合格シールには、手織りによる「地機」と織り機による「高機」という文字が入るものと入らないものがあります。

これは、昭和のある年から入れるようになった文字なので年代を見分ける一つの目安になりそうですね。
 
 

本場結城紬卸商協同組合の証紙

本場結城紬卸商協同組合が品質を保証している証紙が下の組合責任証です。
 
 
■結城紬の「結マーク」と言われる登録商標です。
結城紬「結マーク」
 
 
■結城紬の手つむぎ証紙
結城紬の手つむぎ証紙
 
 
■検査済み証紙
結城紬証紙組合
 
 
この3つの証紙が1セットとしてカシャゲに貼られ、残りの一枚が真綿手紬糸を証明する証紙です。
 
 
■真綿手紬糸を証明する証紙
結城紬商標登録

 
この合計4枚の本場結城紬卸商協同組合の証紙と本場結城紬検査協同組合の証紙が合わさって下の「結マーク」の完成です。
 結城紬本物の証紙
 
 
この証紙が貼られた反物が、本場の結城紬と言われる場合が多いですね。
 
 
しかし、国の重要無形文化財としての指定要件は以下の3つなので、この要件を満たしていない物は「本物」と言わない人もいます。
 

1:使用する糸はすべて真綿より手紡ぎしたもので強撚糸を使用しないこと
2:絣模様を付ける場合は手くびりによること
3:地機で織ること

 
 
以上の条件を「結マーク」に当てはめて見ると、重要無形文化財の技法で作られた物は下の証紙だけということになりますね。
 
結城紬証紙地機平織り
 
 
現在は「結マーク」でも絹紡糸と絹糸と交ぜて織る製品も作られています。

本場結城紬の登録商標は、元々は高機で織られたものにも証紙を貼るために作っれたものなので、国の重要無形文化財指定の技法でない物も含まれます。
 
 
業界では「結マーク」は全て国の重要無形文化財指定の技法と思われがちですが、そうでは無いのですね。
 
 
現在の証紙に改定される前の2004年には、絣が手くびりではない「すり込み」にも重要無形文化財指定の証紙が不正に交付されてるのが発覚しました。
 
証紙を発行していた結城紬技術保存会が、他の2項目は満たしているので価値は重要無形文化財に相当するとが判断したためです。
 
 
翌年から重要無形文化財の表示はなくなりましたが、認定を取り消されたわけではないので市場には証紙が貼られたままであります。
 
 
このような経緯をたどると、証紙をどのようにとらえるかは私たち消費者次第ということが分かりますね。
 
 
そして、結城紬の証紙のもう一つ「紬マーク」はどんな内容なのか紹介します。
 
 

結城紬の証紙「紬マーク」とは

結城紬の「紬マーク」は、茨城県結城郡織物協同組合の組合員が作ったものにこの証紙が付きます。
 
石下いしげ結城紬
 
茨城県結城郡織物協同組合は茨城県結城郡石下町を中心とする鬼怒川沿いの地域で生産される「いしげ結城紬」を取り扱う組合です。
 
 
本場結城紬と言われる「結マーク」ではない結城紬のことを指します。

本場結城紬は工程の難しさなどから、どうしても高価になってしまいますが、消費者がもう少し手の届きやすい価格の物のが、いしげ結城紬です。

本場結城紬と異なり原料は手つむぎ糸ではありませんが、真綿からつむぐ糸を使用するため本場に近い風合いを味わうことができる結城紬です。
 
 
本場結城紬や、重要無形文化財の技法で作られた結城紬は手が出ないけど、結城紬の風合いを味わいたい場合向けといったところでしょうか。
 
 
以上が、「結マーク」と「紬マーク」の違いでした。

何をもって本物というのかも人それぞれですが、

「何が本物で何が偽物ということではない」

ということがお分かりしただけたでしょうか?
 
 
どこの産地でも言えることですが、組合に入ったり検査を通すことで経費がかさむので、どこにも所属せず重要無形文化財の技法で作っている人もいます。

そのため、重要無形文化財の技法で作られたものでも証紙が貼ってない物もあります。
 
そのようなことを考えると、証紙も一つの目安としてとらえるくらいが良いように感じます。
 
着物を楽しむうえで、自分の着物がどういうものなのかを把握したいのは当然のことだと思います。
 
ですが「どういうものなのか」の判断全てを、証紙に頼るのはこれだけ多くの改正や不正が続く業界では難しいのではないでしょうか。
 
 
私が以前、結城紬だけの展示会に行った時に会場にいた産地の方に

「産地でいつも結城紬に触れているプロの人なら、証紙が無くてもどのような糸を使いどのような工程で作られている反物か見分けることができるのですか?」

と尋ねたことがありました。

その時の答えは、

「正直、私たちでも見ただけでは見分ける事はできません」

とおっしゃっていました。
 
 
だとしたら、

「これは、重要無形文化財の技法で作られた結城紬です!」

と言い切ってしまえば誰もわからないということです。
 
 
何だか高い金額を出して着物を購入している人にとっては残念ですが、それを含めても所詮自己満足の世界だということです。

そういった意味でも私たち消費者は知識を高め、着物に求める価値をもう一度見直さなければならないのかもですね。